パテントコラム

2017年1月

【Topic.1】トヨタ 発明報酬2割アップ 最高215万円、評価基準改正も

(2016年12月7日 中部経済新聞)

「トヨタ自動車が、社員の発明に対する報酬を約2割引き上げ、最高215万円とすることで労働組合と調整していることが6日、分かった。報酬を手厚くして社員の意欲を高め、技術力強化につながる発明を増やす。来年4月に始める予定。」とのことです。
現行制度が最高180万円だったところ、35万円の引き上げとなります。また、記事には、より幅広い発明に報酬を出せるよう評価基準を改めることや、資料購入や社外勉強会に充てる費用として最大30万円の支給を検討していることにも触れられています。

【Topic.2】外食「模倣文化」に警鐘 コメダ類似店に使用差し止め仮処分

(2016年12月28日 日本経済新聞)

「『珈琲所コメダ珈琲店』に外観などが似ているとして、和歌山市の喫茶店に対し、店舗外観などの使用差し止めを求めた仮処分について、コメダホールディングスは27日、コメダ側の申し立てを認める決定を受けたと正式に発表した。東京地裁(嶋末和秀裁判長)の仮処分決定は、直ちに効力が生じるため、和歌山市の喫茶店側は店舗の営業を停止した。今回の決定は、外食業界の『模倣文化』に一石を投じそうだ。」とのことです。
記事には差し止めの根拠が記載されていませんが、不正競争防止法に基づく差し止め仮処分と思われます。今回の決定では外観に加えて店内のボックス席の配置についても類似性が認められており、このような店舗デザインの類否に関する争いで仮処分にまで至ったのは非常に珍しいと言えます。これから本訴もありますので、どのような判断がなされるか注目したいところです。

【Topic.3】知財教育で産学官組織 指導方針など策定

(2016年12月31日 日本経済新聞)

「政府は来年1月末、知的財産の保護や活用方法を学校で教育するための産学官共同体を設置する。政府や経団連、小中、高等学校の校長らで構成する組織が参加。企業による出張授業の導入や、教員向けの指導指針の策定などを検討する。」とのことです。
共同体は、「知財創造教育推進コンソーシアム」という名称で、日本弁理士会も入っており、1月27日に第1回の検討委員会の開催が予定されています。元々弁理士会は学校教育支援活動として学校への出張授業等を行っていましたが、要はこのような活動を自治体や大学、企業も含めて共同体としてやりましょうということらしいです。

【Topic.4】その他

新聞記事の解説でも紹介していますが、株式会社コメダホールディングスが他社経営の珈琲店の店舗外装、店内構造、内装がコメダ珈琲店のものと酷似するとして不正競争防止法に基づき仮処分を求め、東京地方裁判所が(株)コメダホールディングスの主張を認めました(株式会社コメダホールディングスによる「仮処分命令の発令に関するお知らせ」より)。

不正競争防止法は、他人の周知な営業等表示と同一または類似の表示を自己の表示として使用し、出所の混同を生ずる行為、または他人の著名な営業等表示と同一または類似の表示を自己の表示として行う行為を不正競争行為として禁じています。これまで、店舗の外装、内部構造などの模倣に対する救済は日本では認められないことが多く、保護が困難でした。従って、今回の仮処分の判断は注意を惹くものと言えます。

店舗の外装、内部構造(店舗デザイン)などは、トレードドレスと呼ばれ、アメリカでは商標法により保護が認められています。トレードドレスとは、一般に、商品やサービスの包装、建物のデザインなど全体的な外観の特徴であって商品や営業の出所を表示するものを指し、実際にアメリカで保護されたものとしては、メキシカンスタイルのレストランチェーンの外観と装飾、ワインショップにおける瓶の陳列方法、さらにアップルストアの店舗デザインなどがあります。
また韓国でも昨年、他人の店の外観、内部デザインなどを模倣した店での営業につき不正競争防止法に基づき「営業の総合的イメージ」を侵害したと判断された例があります。

ただ、アメリカ、韓国においても、店舗の外装などが、その営業を表示するものとして識別力を有し、さらに機能から生ずる形態ではないこと、などの要件を満たした上で保護がされていますので、日本の不正競争防止法で定める要件と似ています。日本で保護が難しいのは、要件のハードルが高いことが理由の一つと思われます。

コメダの事件は今後本案訴訟で判断される予定ですし、これからも同様な事件につき裁判所で判断がなされる可能性も出てくるものと思われます。店舗デザインを含むトレードドレスがこれからどのように保護されていくのか注目したいと思います。