パテントコラム

2017年6月

【Topic.1】バイオ分野の特許出願

(2017年5月1日 日本経済新聞)

日本勢によるバイオ分野の特許出願数が、主要国に比べて出遅れているようです。
生体由来物質を使用した人工臓器に係る日本での特許出願数は、米国での半分以下で、遺伝子の書き換えに関するゲノム編集技術に係る日本での特許出願数は、年に数件と、主要国に比べてかなり少ないようです。
人工臓器や遺伝子編集となると、倫理的な問題が有り、特許出願を躊躇してしまいがちですが、発明の保護は倫理的な問題とは別であると思料されます。
日本のバイオ会社各社においては、倫理的な問題は専門家に委ね、それとは別に、早いもの勝ちである特許出願の手当をぬかりなく図るよう、一日本国民として期待するものであります。

【Topic.2】日本の特許訴訟の勝訴率

(2017年5月15日 日本経済新聞)

最高裁による、2014年と2015年の2年間における特許訴訟の統計では、従前の統計では公表されてこなかった、和解に関する件数が公表されました。
この期間に判決に至った件数は125件、和解となった件数は77件と、和解の割合が多いものとなりました。
そして、判決のうち、差止めや損害賠償の内容を含む勝訴判決の件数は28件で、判決を対象にした勝訴率は、28/125×100=22.4%と、低いものとなっています。尚、従前の統計では、和解に関する公表がなかったとのことですから、上記2年間における勝訴率は、従前の統計に従って算出すると、判決を対象にした勝訴率と同じ22.4%となります。
以上に対し、和解のうち、差止めや損害賠償の内容を含む実質勝訴の和解の件数は61件で、和解を対象にした実質勝訴率は、61/77×100≒79.2%と、かなり高いものとなっています。
かように、判決に対する和解の割合が多く、更に和解において実質勝訴の割合が高いのは、日本のお国柄ですね。
そして、判決に和解を加味した勝訴率は、(28+61)/(125+77)×100≒44.1%となり、結構高いものとなります。
従って、特許権は、日本においても、十分に活用できるものと認識しました。
また、最高裁は、今後の統計においても和解を含めるとのことで、上記のお国柄を考慮すれば、それが実態により一層即し、望ましいものと考えます。
なお、平成26(2014)年から平成28(2016)年までの3年間の特許訴訟の統計(暫定値)が、知財高裁サイト内の次のページに載っております。

http://www.ip.courts.go.jp/vcms_lf/2017_sintoukei_H26-28.pdf