パテントコラム

2018年10月

【Topic.1】キリマルラーメン

(2018年8月2日 日本経済新聞)

愛知県碧南市の小笠原製粉は、看板商品であり50年ほど前から地元を中心に親しまれているご当地即席麺「キリンラーメン」の名称について、本年5月に「大人の事情」により改名すると宣言し、新名称について公募の中から「キリマル」「オガサワラ」「ヘキナン」の3候補に絞ってインターネットやイベントで投票を募っていたところ、本年8月1日、投票結果が良かった「キリマル」を新名称として決定し、秋頃新名称での販売を始めると発表したとのことです。
この改名について、インターネット上ではそこそこ話題になっており、元の名称から飲料メーカー大手の横暴を想像した発言があったり(まとめページ「https://togetter.com/li/1232432」の最初の方の発言)、比較的冷静に分析した記事があったりします(例えば「キリンラーメン」に関する大人の事情について「https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20180529-00085798/」,50年親しまれた「キリンラーメン」、変えたくないけど名称変更へ「https://www.j-cast.com/2018/05/30329921.html」)。
実際には、次の経緯のようです。1998年にキリンラーメンが生産停止となり、キリンビールが2007年の出願により「KIRIN」について加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供等を指定役務として商標登録を得た(登録第5240430号商標)。小笠原製粉は、2003頃からキリンラーメンについて期間限定の復刻販売を不定期に行うようになり、2010年頃には常時の販売を行うようになり、近年では全国展開しグッズ販売するほどになった。この好調さにのって、小笠原製粉が、上記登録商標の指定役務中、穀物の加工品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供について不使用取消審判を起こしたところ(取消2014-300552)、請求不成立審決が出たため、小笠原製粉はその審決取消訴訟を提起した(平成28年(行ケ)第10096号)。しかし、キリンの子会社が許諾のもとでかゆについて登録商標を使用していたため、請求棄却となった(平成28(2016)年11月7日判決言渡)。かような「大人の事情」により、小笠原製粉がキリンラーメンの改名を発表した。
知的財産の分野で、このように派手ではないもののじわじわと広く話題になることはなかなか無いように思料し、お手すきの際に上記のページや検索で得られたページをみることも面白いのではないかと思料いたしました。

【Topic.2】中国における商標の無断登録

(2018年8月3日 日本経済新聞)

鹿児島県の芋焼酎「森伊蔵」「伊佐美」の商標が中国において無断登録されていたところ、この度中国商標局が登録の取消を決定したことが分かったそうです。
中国における商標の無断登録の事例は、現地の会社が無断登録するものとして折々耳に入るところ、上記商標の無断登録は、無関係の福岡県の会社が行っていたそうで、日本の会社が中国での無断登録を行うことに驚いた次第です。