パテントコラム

2018年11月

【Topic.1】色彩の商標登録 ハードル高く

(2018年9月17日 日本経済新聞)

改正商標法の施行により「音」「動き」「色彩」「位置」「ホログラム」の新しいタイプの商標登録が可能になってから3年、色彩の商標についての登録が特にハードルが高いとの記事が掲載されていました。記事によると3年でたったの4件、このうち単色での登録はゼロとのことでしたが、J-Plat Patで直近の情報を調べたところ7件の登録がありました。これらの登録はいずれも我々にも馴染み深い色彩の組み合わせで、トンボ鉛筆の青・白・黒が1件、セブンイレブンの橙・緑・赤が1件、三井住友フィナンシャルグループの深緑・黄緑が2件、三菱鉛筆の茶・黒が2件というものです。制度の導入当初から単色の登録はほとんど不可能だろうと予想されていましたが、やはり単色の登録は未だにありません。
これらの登録状況を見てみると、色彩の登録は顕著性の証明がカギであることがよく分かります。しかもその顕著性は、組み合わせた色彩がいかに我々の印象に強く残っているかが重要であり、組み合わせでない単色となると、その色彩が強く印象に残るものであったとしても登録は困難なようです。おそらく微妙な色彩の相違まで区別できるほど顕著な色彩の商標はなかなか無いというところかと思います。
このように単色の色彩の商標登録は特にハードルが高いのですが、単色であったとしてもその色彩を付ける位置を特定した位置商標として出願すれば登録の可能性がある場合があります。組み合わせによる色彩の商標であって顕著性を証明できるに至らないものについては、図形商標としての登録により保護できるケースがあるかもしれません。色彩の商標については、顕著性の証明が必要であり、これなら登録になるという決め手があるわけではありませんので、出願を検討する際には、様々な保護形態による登録を模索していく必要性を感じます。