パテントコラム

2019年2月

【Topic.1】被疑侵害者への立ち入り検査

(2019年1月25日 日本経済新聞)

当該記事によると、特許の被疑侵害者側にある証拠を押さえるため、被疑侵害者側に立ち入り検査する新たな制度が、1月28日召集の通常国会での提出を目指す特許法改正案に盛り込まれるとのことです。
特許等の証拠収集に関しては、既に種々の制度があり、この点上手くまとめられたものとして、「特許権侵害訴訟における証拠収集手続の立法的課題」(http://www.inpit.go.jp/content/100861672.pdf)があります。
しかしながら、既存の制度ではまだまだ改善の余地があるのでしょうか、上述の立ち入り検査制度の法案提出となったようです。
当該記事では、立ち入り検査制度について、「他の手段では証拠が十分に集まらない」等の要件を満たした場合、原告から申し立てを受けた裁判所が中立的な立場の専門家を選び、当該専門家が被告側の拠点や工場などに派遣されて現場を調べ、実験や計測等により証拠を集めるとされ、米国・ドイツ・英国等の強い権限を伴う証拠収集と同様の水準の制度を整えるものとされています。
しかし、いきなり強い権限を伴う新制度が導入されるとの内容は、これまでの議論の経緯からするとやや疑問です。当該経緯として、例えば「我が国の知財紛争処理システムの機能強化に向けて-産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会-」(https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/tokkyo_shoi/h29houkokusho.html)が参考になるかもしれません。

【Topic.2】静止画ダウンロードの違法化

(2019年1月26日 日本経済新聞)

ダウンロードについて著作権法で刑事罰の対象となっているのは、現状では映像や音楽であるところ、1月28日召集の通常国会での提出を目指す著作権法改正案では、当該対象が著作物全般に広げられているようです。
このように対象が広げられると、静止画のダウンロードも刑事罰の対象となるところ、静止画は映像や音楽に比べ多用されており、利用者への過度の制限や利用の萎縮につながるとの懸念が、様々な方面から指摘されております。
一方で、著作物の保護も大切であり、利用とのバランスがどのように図られるのか、注目していきたく存じます。