パテントコラム

2019年5月

【Topic.1】HV特許無償開放 トヨタ 市場拡大へ年内にも

(2019年4月3日 日本経済新聞)

「トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)について、年内にも自社の関連技術の特許を使用する権利を無償開放する方針を固めた。世界的な燃費規制の強化を追い風に、競合他社に技術を無償提供してHVの市場拡大を目指す。関連部品の外販で需要が増えればHVのコストが下がり、主要部品が共通する電気自動車(EV)の競争力強化にもつながる」とのことです。
トヨタのHV関連の有効な特許数は約2万件で、無償開放する背景には、電気自動車(EV)等の需要が拡大する中、存在感が薄れかねないとの危機感がある旨の指摘があります(同新聞13面)。ただ世界における環境規制の流れは不変だと思われますので、ガソリンを使用するHVがどれだけ世界の市場で拡大できるか読めない部分はあります。

【Topic.2】米中、自動運転巡り暗闘 テスラ、転職した元社員提訴 米、「技術窃盗」に警戒

(2019年4月7日 日本経済新聞)

「ハイテク分野の自動運転技術で中国に対する訴訟が米国で相次いでいる。米テスラは3月、技術を持ち出し、中国の新興電気自動車(EV)メーカーに転職した元社員を提訴した。米アップルから同じ中国メーカーに転職した元社員も機密データを持ち出したとして訴えられている。これまで米中間では半導体や通信分野の対立が目立ったが、成長が見込まれる自動運転技術でも米国の警戒が一段と強まってきた。」とのことです。
米中間では貿易戦争の報道が目立ちますが、このような知的財産に係る問題も大きくなっているようです。中国共産党には「千人計画」と呼ばれる高度人材の招致プログラム(海外の企業と大学に勤務する研究者や技術者、知的財産と技術保護担当の中国人幹部を対象者に選んで本国に呼び戻し、中国の科学的発展に貢献させる計画)があるそうで、18年8月に米ゼネラル・エレクトリック(GE)から原発関連技術を持ち出したとして逮捕された社員も千人計画の認定者だったそうです。

【Topic.3】特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の新機能について

本年5月7日より、刷新された特許情報プラットフォームが使用できるようになりました。主な内容は以下の通りです。

・タイムラグの改善
特許庁が書類を発出してから審査・審判経過情報が参照可能になるまでの期間が、従来の約3週間から原則1日(翌日に情報が反映)となりました。
・提供される書類の範囲拡充
参照できる書類が、特許・実用新案に加え、意匠・商標まで拡充しました。審判段階の書類も照会可能となりました(但し、意匠、商標での書類は平成31年1月以降のもの)。
・検索対象の拡充
中国公報や韓国公報の翻訳データが特許情報プラットフォームに移行され、「特許・実用新案検索」メニューから日本語により検索可能となりました。翻訳データは、AIを活用した最新の機械翻訳アルゴリズムにより、ニューラル機械翻訳へ切り替わる予定です。また、権利が消滅した商標も検索対象となっています。

特に経過情報が翌日に照会できるのは非常に便利で、使い勝手は格段に向上しています。5/7からの刷新当初は番号照会や検索等が殆ど行えず、使えない状態が続いていましたが、原因究明により、5/17の時点では応答遅延も改善されています。

【Topic.4】日本弁理士会の東海支部の新名称について

日本弁理士会の東海支部は、本年4月、名称を「東海会」に変更しました。全国9つの「支部」が全て「会」に名称変更しています。