パテントコラム

2020年1月

【Topic.1】商標登録出願の審査期間について

現在、商標登録出願の審査には約12ヵ月の期間を要しております。数年前まで4~5か月程度で審査結果が出されていた時期もあったことを考えると、その倍以上の時間がかかっていることになり、商標の早期権利化が強く求められております。
そこで、特許庁は、2018年10月に試験的に導入した「ファストトラック審査」の運用を変更することを先日公表しました。この「ファストトラック審査」とは、特許庁の類似商品・役務審査基準の商品・役務リストに掲載されている指定商品・指定役務通りに記載して出願されたものについては、通常の出願よりも早く審査に着手するという制度です。この制度を利用した場合、昨年は平均10ヵ月程度で審査結果が出ていたようですので、約2ヵ月の期間短縮の恩恵を受けられました。これを本年2月1日以降の出願については、6ヵ月で審査に着手するというのが今回の運用の変更点です。つまり、通常の出願は12ヵ月程度かかるものが、本制度を利用した出願についてはその半分の期間で審査結果を手にすることができるということになります。
しかしながら、半年も期間が異なるのはあまりにも大きく、とても歓迎できるものではありません。指定商品・指定役務は権利範囲を定める一番大きなファクターですので、我々弁理士は、クライアントと詳細な打ち合わせをしてその範囲を検討し、必要な商品・役務を確実にカバーできる指定商品・指定役務の表記方法を決定します。そのような指定商品・指定役務の表記は、往々にして商品・役務リストに掲載されていないものとなりますので本制度を利用することができず、審査が後回しにされてしまうのです。
商品・役務リストにない商品・役務を指定した出願は、特許庁もその権利範囲を定めるのに手間がかかるため、そのような出願を抑制することよってその手間を省こうとしているのではないかと勘繰ってしまいます。そのような小手先の運用変更によって審査期間の短縮を図るのではなく、審査官の増員によって対応すべき問題です。この点、特許庁も審査官を増員するとは言っていますが、早急な増員は審査の質低下につながりますので、質の高い審査官を養成しつつ、その間の「当面の制度」として本制度を運用するに留めてほしいところです。