パテントコラム

2020年6月

【Topic.1】ワクチンに特許制限

(2020年5月20日 日本経済新聞)

WHOは、5月19日、ワクチンを最初に開発した企業の特許権に制限をかけ、安くワクチンを供給することで協調をめざす決議案を採決しました。具体的には、強制実施権の設定による制限が検討されているようです。
この決議案は、日本と欧州が中心となってWTO総会に提案されたものです。米中によるワクチン開発が本格化するなか、最初に開発した企業が市場を独占することを防ぐためと言われています。現に、米国はこの決議案には加わらなかったようです。また、トランプ大統領がワクチン開発企業に資金を提供する見返りとして独占使用権を求めたとも報じられており、米国がワクチン開発で主導権を握りたいという意図が見えてきます。
もっとも強制実施権がむやみに設定されると研究開発に投じた資金回収の機会が奪われることになりますので、開発意欲を減退させないよう絶妙なバランス配分が求められるところです。開発競争を刺激しつつ、実用化後にはワクチンを世界各地へ公平に普及させる仕組みづくりを世界が一丸となって取り組んでほしいところです。

【Topic.2】日本酒の飲み頃示す シールが商標登録

(2020年5月22日 中部経済新聞)

宝ホールディングスは、10度前後まで冷やすと「のみごろ」の文字と図形が浮かび上がるシールが「ホログラム商標」として商標登録されたことを発表しました。新しいタイプの商標としてホログラムの商標登録が認められるようになって5年が経ちますが、未だにホログラム商標は15件しか登録されていない珍しい商標です。
このシールに利用されたホログラムに対する権利保護は、あくまでも商標権としての保護ですので、そのホログラムのデザイン部分(識別力を発揮する文字・図形部分)が商標の保護対象になります。つまり、デザインが異なれば商標としては非類似になるものですので、温度変化によって飲み頃を示すシールそのものがこの商標登録によって独占されるわけではありません。
新型コロナウィルスの感染防止のため自宅で飲食する機会が増えていますので、異なるデザインのホログラム商標が今後いろいろ出てくるかもしれません。