パテントコラム

2022年10月

【Topic.1】トイレ紙特許巡り提訴 「3倍巻きで技術侵害」 日本製紙、大王製紙を相手に

(2022年10月1日 日本経済新聞)

「日本製紙子会社の日本製紙クレシア(東京・千代田)は6日、従来の3倍の長さながら大きさをほぼ同じに抑えたトイレットペーパーの特許を侵害されたとして、大王製紙を東京地裁に提訴したと発表した。トイレットペーパーの製造・販売の差し止めと、製品の破棄や3300万円の損害賠償を求めた。」とのことです。
日本製紙は「3倍巻き」の製品に関連する特許で50件以上取得しており、このうち紙の柔らかさを保ちながら直径を抑える加工技術など、3件の特許技術が侵害されたとしています。他の情報を当たってみましたが特許の特定はできませんでした。大王製紙は争う意思を示しているようです。
確かに最近スーパー等でも長尺のトイレットペーパーの陳列が目立ちます。弊宅でもこのような長尺のものを購入することがありますが、ただ1個が重いし薄いしで私自身はあまり良い印象を持っていません。

【Topic.2】つながる車の特許料支払い トヨタや日産、初の合意 51社と 日本勢、取引慣行に転機

(2022年9月22日 日本経済新聞)

「トヨタ自動車とホンダ、日産自動車など日本車大手と欧州ステランティスが、インターネットに接続する『コネクテッドカー(つながる車)』について、通信技術の特許料の支払いに応じる。フィンランドのノキアなど通信大手51社の交渉の窓口となっている米企業がトヨタなどと契約したと21日発表した。日本車メーカーが支払いに応じるのは初めてで、日本の自動車業界の取引慣行の転換点となる。」とのことです。
窓口となる米企業は、通信規格「LTE(4G)」の特許料の交渉をまとめて担う「アバンシ」で、パテントプールに基づいて交渉したようです。トヨタなどは「2G」から「4G」までの関連特許を包括的に使う代わりに車1台あたり15~20ドルの支払いに応じるそうです。トヨタでは2022年にグループで1038万台を販売しており、これら全てが対象となると、最大で約300億円が特許料となるようです。
このような車の一部となる通信技術に関するパテントがある場合、従来は通信技術を直接担う部品メーカーが交渉に応じて特許料を支払うのが通例でしたが、このように自動車メーカーが足並みを揃えて契約したとなると、自動車に限らず、他の製品についても、部品に関する特許については権利者が製品のメーカーを相手として対応を求める傾向が強まるかも知れません。製品メーカーも部品に関する知財の確保を意識する必要がありそうです。

【Topic.3】買収先の知財トラブル 東京海上が補償 特許侵害に備え

(2022年9月22日 日本経済新聞)

「東京海上日動火災保険は10月から、M&A(合併・買収)後に買収先の知的財産を巡るトラブルを補償する保険を売り出す。国内企業間のM&Aで買い手企業が加入する仕組み。買収先の知財が特許侵害で訴えられた際、賠償金や争訟にかかる費用を補償する。知財など無形資産を目的にしたM&Aが増えており、買収後のリスクを軽減したい需要を取り込む。」とのことです。
通常企業のM&Aでは、売り手が持つ知財が第三者の特許を侵害していないことを保証する保証条項が契約書に盛り込まれ、後に第三者の特許の侵害が判明した場合は売り手が買い手に生じた損害を補償したりするようになっています。この損害賠償額がどれくらいになるかは、製品であれば販売価格や販売数等に応じて決定されますが、この保険によれば、支払限度額が5億円の場合、保険料は500万円程度となるようです。掛け捨てにしては高額なので保険の加入には迷うところかも知れません。

【Topic.4】「かっぱ寿司」社長に逮捕状 転職前データ持ち出しか 警視庁 不正競争防止法違反疑い

(2022年9月30日 日本経済新聞)

「回転ずし業界4位の『かっぱ寿司』を運営するカッパ・クリエイトの田辺公己社長(46)が、同社に転職する前に競合他社『はま寿司』の仕入れに関する内部データを不正に持ち出した疑いがあることが29日、分かった。警視庁は持ち出された情報が営業秘密に当たるとみて、不正競争防止法違反容疑で田辺社長の逮捕状を取った。」とのことです。
田辺社長は、はま寿司で14~17年に取締役を務めた後、20年11月にカッパ社の顧問となり、副社長を経て21年2月に社長に就任したそうです。このようなライバル企業間での役員経験者の転職があり得るのも驚きですが、カッパ社でもはま寿司からの転職を受け入れた以上、前職で得た知見による貢献を期待していた筈ですので、カッパ社に全く責任がないとは言い難いと思います。実際10月22日の時点でカッパ社法人も同じ容疑で起訴されています。