パテントコラム

2023年1月

【Topic.1】権利者不明の著作 二次利用促進

(2022年12月6日 日本経済新聞)

著作物を他言語に翻訳したり、小説を映画化したり、アニメキャラクターのフィギュアを制作したりなど、著作物をベースに作られた新たな作品を「二次的著作物」といいます。このような二次著作を行うためには当然ながら著作者の許諾が必要になるのですが、古い映像作品や個人制作の動画・音楽など、著作者が不明または特定できないようなケースがよくあります。例えば、映画上映用に撮影したフィルムをデジタル配信するにあたり、許諾を得ようにも権利を保持する会社が既に存在していないケースなどがあります。また、SNS上に流通する動画配信などは匿名性が高く、容易には配信者個人を特定することができません。このような著作者不明の著作物ついては、文化庁長官の「裁定」を受けることにより二次利用が可能となりますが、それに要する時間、労力、コストなどが大きいことがその利用を難しくしていました。
そこで、この度、著作権法の改正により二次利用のハードルを下げる動きが本格化してきました。具体的には、相談に応じる一元的な窓口組織を新設し、そこでは、著作権管理団体のデータベースと照合させて原著作者を探し出してくれます。それでも著作者が不明の場合は、著作権使用料相当額を窓口に納めることにより暫定的に利用することができるようになります。インターネットの普及により今は映画のデジタル配信が主流となり、今後はメタバース(仮想空間)でのイベント開催など、デジタル市場の拡大に伴う二次利用の需要が高まることが見込まれますので、本制度の早急な運用が期待されているところです

【Topic.2】「海賊版サイト」賠償、増額を

(2022年12月6日 日本経済新聞)

同じ日の日経新聞にもう一つ著作権法改正に関する記事が掲載されていました。
近年、巣ごもり需要の影響もあってアニメ映画の海賊版サイトによる被害が増加しており、権利者の被害を回復させるために賠償額を増加させる方策がいろいろ検討されているようです。海賊版による被害を巡っては、賠償額が低く侵害者の「やり得」となっているのが現状ですが、今後は、著作者の販売能力を超える部分についてもライセンス料相当額を損害額に上乗せし、また、それが海賊版の場合にはライセンス料率を高く設定するなど、いわば懲罰的な賠償金も求められるような法改正を行うことが検討されています。