パテントコラム

2023年6月

【Topic.1】ウィンドウズに対話AI 文章でイメージ→自動的に作業 マイクロソフト

(2023年5月24日 日本経済新聞)

「米マイクロソフトは23日、6月に対話型の人工知能(AI)をパソコン向け基本ソフト(OS)『ウィンドウズ11』に搭載すると発表した。基本画面からAIに文字入力で指示し、ソフトの操作、設定変更、情報検索や要約を自動で手助けする。1990年代以来続くマウスで自ら業務ソフトを操作する仕事のあり方が変わりそうだ。」とのことです。
最近米国オープンAIである「ChatGPT」が話題で、我が国でも総務省が国内で生成AIの開発を促す提言をまとめた旨の記事(6月22日、日本経済新聞)もあり、AIの普及に向けて加速している感があります。遂にパソコンに搭載されることになりました。日本での販売はもう少し先になりそうですが、ゆくゆくは発明の課題や特徴を入力すればクレームや明細書をある程度自動的に作成することもできるようになると思われます。長年クレームや明細書の作成に四苦八苦してきた身としては複雑な気持ちになります。

【Topic.2】AI、7つのリスク対処 政府が論点整理 著作権侵害や犯罪悪用

(2023年5月27日 日本経済新聞)

「政府は26日、人工知能(AI)の活用方針を話し合う『AI戦略会議』を開き、議論の具体化に向けた論点整理文書をまとめた。犯罪への悪用や雇用の喪失、著作権・プライバシーの侵害など7つのリスクを示した。利活用に向け『過度な規制は避け、必要な対応は検討すべきだ』と記した。」とのことです。
この文書では、AIの具体的なリスクとして、①機密情報漏洩や個人情報の不適切利用、②犯罪への悪用、③偽情報が作りやすくなる、④サイバー攻撃の巧妙化、⑤教育現場での不適切利用、⑥著作権侵害、⑦失業者の増加の7つが例示されています。
確かにどのリスクも現実に起きる可能性は非常に大きいと思われます。規制の抜け道を見つけることもAIにはできるでしょうし、AIが何処まで進化するのか予想もつきません。暴走したAIを人間が止められない、といった過去の映画のような出来事が実際に起きないことを祈るばかりです。

【Topic.3】海外サーバー経由で配信 『ニコ動』特許を侵害 ドワンゴ、FC2に逆転勝訴 知財高裁

(2023年5月27日 日本経済新聞)

「動画配信サービス『ニコニコ動画』を手掛けるドワンゴが、動画にコメントを流す特許を侵害されたとして米FC2などに配信差し止めと10億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が26日、知財高裁の大合議(裁判長・大鷹一郎所長)であった。大鷹裁判長は請求を棄却した一審判決を変更して特許侵害を認め、FC2側に配信差し止めと約1100万円の賠償を命じた。」とのことです。
22年の1審・東京地裁判決では、属地主義の原則に従い、サーバーが海外にあるとして特許侵害を認めなかったものですが、控訴審では、サーバーが国外でも、行為の具体的な態様、日本国内にある構成要素が果たす機能や役割、発明による効果が得られる場所、特許権者の経済的利益への影響などを総合的に考慮し、我が国の領域内で行われたと見ることができる場合、日本の特許権の効力が及ぶ、との基準を示して逆転判決となったようです。
このように属地主義を柔軟に解釈する判断がなされたことで、サーバーを海外に設置して特許侵害を免れるという抜け道がなくなりつつあると言えます。ドワンゴとFC2とは関連訴訟でも争っており、当該訴訟ではドワンゴの主張が知財高裁で認められてFC2側が上告しているようですので、最高裁の判断が待たれるところです。