2025年7月
【Topic.1】知財立国むしばむ模倣品 輸入差し止め過去最多、フリマサイトが舞台に
近年、日本の税関では高級ブランド品などの模倣品の摘発が急増し、2023年度には輸入差し止め件数が33万件を超えて過去最多を記録しました。摘発品の約8割は中国からのものであり、模倣品の主な供給源となっています。税関職員はスニーカーなどの商品を一つ一つ確認し、水際での流入防止に尽力していますが、模倣品業者の手口は巧妙化し、摘発率は低下傾向にあります。模倣品の流通経路にも変化が見られ、従来のルートに加え、SNS、とりわけ若者に人気のTikTokなどを介した販売・拡散が急増しています。個人間での小口取引が容易になり、取り締まりが難しくなっているのが現状です。
誘導型詐欺広告を利用した模倣品販売が増加しており、こちらについても対応が課題となっていますが、低価格であることを理由に模倣品と認識した上で購入を選択する行動が散見され、消費者側の意識が変化していることも課題となっています。フリマサイトで安価な模倣品を購入する人が増加しており、若者層にとってSNSを通じた「流行」や「手頃な選択肢」は魅力的で、模倣品への需要は高いものとなっています。この背景には、物価高や円安、個人間で取引できるツールの拡大があります。
このような模倣品の流通が常態化すれば、日本の知的財産権保護体制そのものが揺らぎ、ブランドイメージの低下や正規事業者への打撃を通じて、日本企業の競争力低下につながることになりかねません。
日本は「知財立国」を掲げ、知的財産を経済の基盤の一つと位置づけてきましたが、その基盤をむしばむ模倣品問題への対策が追いついていないことが現状となっています。記事では、税関の努力だけでなく、国際的な連携の推進や消費者への啓発活動の重要性を指摘しており、総合的な対応の必要性を訴えています。
弁理士の立場から見ても、この記事が取り上げた模倣品問題は深刻で、日本の知財立国としての信頼性を揺るがす重大な課題だと感じています。税関を中心とした水際対策の重要性は言うまでもありませんが、模倣品流通のデジタル化と巧妙化により、従来の対応だけでは限界があるのが現実です。特にSNSを介した個人間取引に目を向けた法制度の整備や執行体制の強化が急務だと痛感します。商標法は、2021年改正により海外から輸入する模倣品の規制が強化され、現在は海外事業者が発送した模倣品をすべて差し止めることができるようになり、改正前には差し止められなかった個人所有目的の輸入も差し止められることとなりました。しかし、個人間の取引は、今も原則規制の対象外となっています。
加えて、若年層を中心とした模倣品への心理的抵抗感の低下は、知財権に対する理解不足を顕著に示しています。模倣品の背後にある正規品の権利者の努力や正規品の価値を伝える啓発活動は、力を入れるべき課題だと感じます。法的措置だけでなく、教育や意識改革によって「正規品を支持する文化」を育むことが、模倣品問題の根本的解決につながると考えます。

