2026年3月
【Topic.1】作曲AI 学習データ特定
音楽などのコンテンツ分野では、AI開発企業によって著作物が無断でAIの学習や生成に利用されるトラブルが多発しています。具体的に音楽については、有名歌手の声を使った楽曲がAIで生成され、ネット上で配信されるケースが相次いでいます。
ソニーグループは、人工知能(AI)により作られた楽曲について、どのミュージシャンの曲が学習や生成に使われたかを分析する技術を開発しました。この技術によれば、元になった作品の貢献度合いも数値化できるとのことです。
AIが学習や生成に利用した楽曲を特定できれば、AIの開発元からも使用料を徴収することが可能になり、無許可使用による権利侵害も防止できるとともに、音楽生成AIが生み出す収益をクリエータらに配分する仕組み作りにも役立つと同社はみています。
現時点では、この技術についての実用化は未定とのことで、実用化に向けては、AI開発企業が自社モデルに組み込んだり、コンテンツ企業がライセンス交渉を進める際に活用したりという用途が想定されているようです(日本経済新聞 2026年2月16日)。
本記事で紹介されている技術は、AI生成楽曲から学習元となった既存楽曲を推定し、さらにその寄与度を数値化する点に特徴があり、生成AIと著作権の関係を整理できる可能性を有しています。生成物が既存著作物に依拠しているかの立証は容易ではありませんが、この技術は、生成物の特徴を解析する等して学習元作品との関係を分析することで、依拠性の判断や権利侵害の立証を補助する可能性がある点で注目されます。
また、寄与度の数値化の実現により、将来的なAI利用料分配制度の構築において重要な役割を果たすと思われ、新たなライセンスモデルの基盤となる可能性があります。
もっとも、実際のAIモデルは大量のデータを用いて学習される大規模なモデルであり、その内部構造はブラックボックス化している場合が多いと考えられるため、生成結果が特定の既存作品にどの程度影響を受けているかを個別に特定することは必ずしも容易ではないと思いますし、権利者が納得できるものとなるかについては疑問です。
生成結果と特定の既存作品との因果関係を、客観的にどの程度示すことができるか、また寄与度の算定結果がどの程度の信頼性を有するものとなり得るかが、実用化に向けた課題と思われます。また、仮に寄与度が一定の形で算出されたとしても、その数値をどのように著作権侵害の判断や利用料分配の根拠として位置付けるかといった法的に整備することも、今後の課題となると思われます。

